新生宣教団ではここ数年、ミッションパートナーからの依頼を受けて、アカ語の旧新約聖書と新約聖書を印刷して送り出しています。この数年だけでも合計21,000冊の聖書を印刷することができました。
前回(カレンの人々と聖書)に引き続き、ミッションパートナーのレポートから、今回はアカ族の人々と聖書についてご紹介します。
アカ族は、ミャンマー東部、タイ北部、ラオス北部、ベトナム北部、中国南西部の山岳地帯に暮らす山岳民族です。
アカ族は数世紀前に中国南西部の雲南(うんなん)省を起源とし、19世紀半ばにミャンマー(ビルマ)東部、ラオス北部、ベトナム北部に移住し、20世紀初頭にミャンマーからタイ北西部に移住しました。
多くの山岳民族と同様に、アカ族は原生林を切り開いて燃やし、土地の肥料がなくなるまでの数年間耕作する「焼畑」と呼ばれる農業を伝統としています。その土地が作物を実らせなくなると、村全体が引き上げて新しい場所に移動し、また開墾からやり直します。
近年では手つかずの土地が不足し、また環境のために政府が焼畑を禁止するようになってきたため、アカ族はより持続可能な農業や換金作物の栽培に目を向け、食料を買うための現金を稼いでいます。最も儲かる(そして危険な)換金作物の1つは、アヘンを収穫するための「ケシ」であり、アカ族ではアヘン中毒の発生率が高くなっています。
アカ族は、山岳民族の中で最も厳格で従うのが難しいと言われる規律を持った民族です。
アカ族の口頭伝承によると、はるか昔、多くの人々(中国人、タイ人、ラフ族、リス族、アカ族)は、「Za’n」と呼ばれる宗教的信念体系を受け取るために創造神に会いに行きました。
それぞれのグループは、「Za’n」を家に持ち帰るためにかごを持っていきましたが、アカ族以外のグループは、ゆるく編まれたかごを持っていたため、「Za’n」が網目をすり抜けて減ってしまいました。しかし、アカ族はしっかりと編まれたかごを持っていたため、すべての「Za’n」を持ち帰ることができました。これが、アカ族の信念体系が非常に広大で要求が厳しい理由です。
この規律は「アカ族の道」と呼ばれ、彼らの生活すべてを包括する厳格なものです(彼らはこれらの掟を守ることを「アカ族の道を運ぶ」と言います)。アカ族が互いにどのように関係し、作物を栽培し、狩りを行い、結婚し、誕生し、そして死ぬべきかを規定しています。この「アカ族の道」を運ぶのをやめたアカ族がいた場合、彼らはすぐに村を去らなければなりません。この精巧な宗教・信仰体系は、祖先からそれぞれのアカ族に受け継がれてきたものであり、それぞれのアカ族は、この偉大なアカ族の伝統の連鎖を、あらゆる犠牲を払ってでも維持することが求められています。
「アカ族の道」を運ぶのをやめることは、祖先の霊を大いに怒らせ、村と家族に多くの災難を引き起こすことであるとして恐れられています。
アカ族がキリスト教を受け入れるのになぜ時間がかかったのかを理解するためには、この「アカ族の道」を運ぶことの意味を理解することが重要です。
しかしこのことは同時に、なぜアカ族がイエスを追い求め始めたのかということにもつながっています。多くのアカ族にとって、アカ族の掟に従うことは非常に負担が大きく、難しく、費用がかかります。『天路歴程』(ジョン・バンヤンの著書)における「クリスチャン」(主人公の名前)のように、「アカ族の道」を運ぶことは、人に重荷を負わせることなのです。それはどんなに重くとも決して満足できず、荷台を押しつぶすほどにどんどん重くなり続けます。それは、努力によって神に近づこうとする試み、または「霊魂」をなだめるための試みによるものです。アカ族を含め、私たちの誰も宇宙の創造者に認められるほどの正しさを得ることはできません。パウロは、自分たちの努力によって法律を守ろうとする人々について、次のように述べています。
律法の行いによる者は、皆のろいの下にある。「律法の書に書いてあるいっさいのことを守らず、これを行わない者は、皆のろわれる」と書いてあるからである。
(ガラテヤ人への手紙3章10節)
アカ族のやり方は、満足と平安をもたらすものではありません。アカ族が「アカ族の道」を維持し、さまざまな霊や、祖先を満足させるためには、多くの動物や穀物の犠牲が必要です。それはすでに貧しい人々にとって重い経済的負担になっています。「アカ族の道」に従うことの重さと難しさは、イエス・キリストが与えるものとは非常に対照的です。イエスはこのように言いました。
すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。
わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。
わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである。
(マタイによる福音書11:28-30)
イエス・キリストは疲れたアカ族に軽いくびきと休息を提供し、人生のあらゆる面において儀式という重いくびきで縛られていた人々を解放しました。
イエスはご自身の死と復活において究極の犠牲を捧げ、彼に従うことを選んだ人々が、創造主である神との関係を回復できる道を開きました。
イエス・キリストの福音は1869年にアメリカのバプテスト宣教師を通して、ビルマ(現ミャンマー)のアカ族に伝えられ、1909年に初めて受け入れられました。
アカ族は当時口承文化で文字がなく、口承を通して世代から世代へと情報を伝えていました。そのためポール&エレイン・ルイスという宣教師夫妻はアカ族のために文字(アカ文字)を作り、アカ族の信者のために1950~1960年代に新約聖書を翻訳しました。
ルイスの同僚で、ビルマのアカ族クリスチャンの一人であったヤジュは、1955年にタイに渡り、海外宣教師フェローシップ(OMF)のピーター&ジャン・ナイチンゲール宣教師夫妻と協力して、タイのアカ族に福音をもたらしました。
タイのアカ族に7年間伝道したのち、2人のアカ族の男性、アトサとアシャハとその妻がイエスの道に従うことを決意し、タイで初めてのアカ族教会が誕生しました。
イエス・キリストを受け入れた最初の2つの家族は、イエスの道に従うことを決心すると同時に、彼らの故郷の村を去り、彼ら自身の「イエスの村」を形成しなければなりませんでした。
これらの2つの家族に続いて、さらに多くのアカ族がその後の数年間でイエスの道に従うようになりました。
今日、5か国674,000人のアカ族のうち13.8%(約93,000人以上)がキリスト教徒であると推定されています。各国のアカ族クリスチャンの割合は、タイでは90%以上、中国では0.35%と様々です。
2019年、アカ族の信者とその教会の指導者に、最初の旧新約聖書が提供されました。それはビルマのアカ族が最初に重いアカ族の重荷をイエスのもとに下ろし、イエスの道に従うことを選んだ時から111年後、そして最初のタイのアカ族がイエスの道に従うことを選んでから57年後のことでした。
それまでは新約聖書はありましたが、アカ族のキリスト教徒の大多数はそれすら手にすることはできませんでした。ポール・ルイスが翻訳した、古いアカ族の方言の旧約聖書を含む聖書全体が手に入るようになったのはごく最近のことです。そして2019年に、貧しいアカ族の大多数が理解できるこの古い方言で、アカ族の信者のために旧新約聖書がはじめて印刷されました。
以下は、これらの聖書を受け取った信者の写真とメッセージです。
(この証は2020年のものです。クーデターが起こった現在では、状況が変わっている可能性があります。)
私はM、58歳です。私はクリスチャンの家庭で育ちましたが、私の信仰は深くありませんでした。
私は17歳のときに結婚して、21歳の時(1982年)にキリストの元に来ました。キリストの元に来ると、以前よりずっと幸せになりました。私はいつも子どもたちとキリストの教えを分かち合いました。
そして7年後、彼らは皆信者になりましたが、私の夫はアルコールやタバコ、薬物におぼれていました。しかし2017年に、私の夫もキリストの元に来て、すべての中毒から解放されました。
主を讃えます。神の恵みによって、私にはとても愛しい家族があります。
何年もの間、子どもたちと私は一緒に祈り、神に賛美していましたが、私たちは聖書を持っていませんでした。アカ族のために完全な聖書(旧新約聖書)を無料で与えてくれてありがとうございます。
私の好きな聖書箇所は、詩篇1:1-3とヨシュア1:8です。
私の名前はR、41歳で、ミャンマー東部の出身です。私はクリスチャンの両親に育てられましたが、教会に通ったことはありませんでした。
私は酒やタバコ、薬物におぼれていました。私は思いつく限りの悪いことをしていたため、両親はいつも私に腹を立てていました。
2010年、両親は私をキリスト教宣教支援団体が率いる薬物治療の施設に連れて行ってくれました。
彼らは私たちが外に出るのを許さず、毎日私たちに神の言葉を教えてくれました。私がそこを去る前夜、私は私の人生を主に明け渡しました。そのとき神は、私の人生のすべての邪悪なものに対する欲望を取り去ってくれました。主を讃えます。
私がキリストを受け入れた後、私の考え方やライフスタイル、習慣はすべて変わりました。私は熱心に教会に通いたくなり、讃美歌を歌いたくなり、聖書を読みたくてたまらなくなりました。
私が神のために生きることを妨げるものは何もありません。今、私の両親、親戚、友達や教会のメンバーは今まで以上に私を愛しています。
私は神に聖書学校に通うための扉が開かれるように祈りました。そして2016年、神は私がヤンゴンの聖書学校で勉強するための扉を開いてくれました。いつも私に完全な恵みを与えてくださった神にとても感謝しています。
私がキリストを受け入れたとき、私はビルマ語の聖書を与えられました。しかし私はすべてを理解していません。私たちの国で聖書、特にアカ族の聖書を所有することは非常に困難です。これには多くの理由がありますが、大きな理由は貧困と、脆弱な輸送基盤です。それで、2010年の(キリストを受け入れた)その日から、自分のアカ語の聖書のために祈ってきました。
そして2019年10月に、神はあなた方全員を通してその祈りに答えてくださいました。私は賛美歌まで付いた無料の、完全なアカ語の新旧約聖書を与えられました。
これは私が人生で所有した最初のアカ語の聖書です。私はこれまで、聖書がただで与えられるなどということを見たことがありません。神は私の祈りの多くに答えてくださいましたが、これはその中でも最も大きい答えとなりました。
私たちのアカ族のための聖書を無料で受け取ったということは私にとって驚くべきことです。アカ族への最高かつ貴重な贈り物をありがとうございました。
宣教師が訪れるまでアカ族の人々には文字が無く、アカ文字は聖書のために作られたと知り驚きました。そしてそれから100年以上後に、待ち望まれた旧新約聖書が印刷されるために遠く離れた日本の、私たち新生宣教団が用いられたことを心から感謝します。
[写真は新生宣教団で印刷されたアカ語の旧新約聖書讃美歌付き(右)と、新約聖書(左)]
これらの聖書をできる限り安いコストで印刷し、ミッションパートナーに提供するために皆様のご支援を必要としています。
どうぞこの働きを覚えてお祈りください。
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