明るくあたたかい文章が人気のメッセージ「関真士のAmazing LIFE」を、WEBコラムとして不定期でご紹介しています。
今回は第７号の全文をご紹介します。
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言うまでもなく、オーガニック食材への関心はますます高まっている。農薬を使わないで有機肥料を使い、出来る限り自然に近く育てられた食材は、安全で栄養価も高く、何よりも美味しい。
もちろん、それを作っている人にとっては大変な労力がいるし、その分値段も高くなる。それでも買うほうとしては、やはりオーガニックを選びたい。
さて、ここで一つ提案したいのは、食材だけではなく、“人生もオーガニック” ということだ。滋味深い、豊かな味わいのある品性を身に着けたい。出会う人にとって安全で、祝福をもたらすような、そんなオーガニックな人になりたい。
それにしてもオーガニックに欠かせない有機肥料の元になるのは、いわゆる汚物である。人間や家畜の糞尿である。はっきり言って臭い、汚い物だ。子どもの頃に、田んぼの肥溜めに落ちた時の悪夢を思い出す。
しかし、その汚物がうまい具合に発酵すると最高の肥料となるのだ。
とても心が豊かで、どこまでも優しく寛容な人に出会うことがある。その時、この方は、ずいぶんと苦労をされてきたのだろう。だからこんなにも人の気持ちを分かってくれて寛容なのだろうと思わされる。
一方で、心が怒りで満ち、ことばや態度で人を傷つける人に出会うと、この方は、ずいぶんと苦労をされてきたのだろう。だから心がこんなにもささくれだっているのだなと思わされる。
同じ苦しい経験でも、それがその人の人生を苦くするか、豊かにするかは、その経験が汚物のままで残っているのか、それとも肥料に変えられているかの違いである。
ある苦しい出来事は、私たちの人生に怒り、憎しみ、恨みなどをもたらす。それは、自尊心を傷つけ、自分の存在を否定し、他者をも傷つけるようになる。それはまるで人生の汚物のようだ。どんなに表面的に取り繕っても、内側から悪臭を放つものだ。 しかし、そんな苦しい経験も、最高の肥料に変えることができるなら、人生に豊かな実を結ぶようになる。そこからは、愛、喜び、平安、希望…、良い実がたくさん結ばれてくる。その実が他者にも分かち合われるなら、豊かな世界が広がっていく。
私は、かつては関わる人に悲しみ、怒り、傲慢の実を分かち合っていた。まさに悪臭を放つような者だった。
その原因は、平和な家庭が崩壊したことからくる存在不安だと今なら分かる。その時には、その苦しい経験は、まだ肥料にはなっていなかった。
しかし、ある時から、その苦しい経験のすべてが人生の肥料に変わり始めたのだ。
それは、そんなどうしようもない自分が、神に愛されていると知った時からだ。
人生の悲しみや痛みを負って、もがき苦しんでいる自分、自分を愛することも、隣人を愛することもできない、むしろ傷つけてしまう自分、そんな自分でさえも愛されていると知ったのだ。
苦しいことがあったからこそ、愛される喜びを知った。悲しみがあったからこそ、慰められた。失望したからこそ、希望の光に気づけた。孤独であったからこそ、共に生きる温もりを感じることができた。
人生のどんなに苦しい経験の中にあっても、そこで神の恵みを経験するならば、すべては人生の肥料に変えられる。
神の恵みは、どんな時にも、どんな状況にも、どんな人にも注がれている。
ちょっと乱暴な言い方だが、人生に辛い事が起こることは避けられない。「転んでもただでは起きない」という言葉もある。どうせなら、すべての出来事、経験を肥料に変えてしまおう。
食材だけではなく、人生もオーガニックでいこう。
1964年東京生まれ。荒れ果てた10代を過ごし、20歳の時にコックの仕事で渡米し、クリスチャンとなる。その後、27歳で東京聖書学院を卒業し牧師となる。40歳の時にハワイにあるホノルル・キリスト教会の牧師となり現在に至る。家族は、愛する妻と4人の子供。趣味は、料理と茶道。
Illustration by Rutsuko
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