明るくあたたかい文章が人気のメッセージ「関真士のAmazing LIFE」を、WEBコラムとして不定期でご紹介しています。今回は第13号の全文をご紹介します。気に入ったコラムは、このページの最後から、無料でダウンロードしてA4用紙にプリントアウトできます。気に入ったらぜひプリントして周りの方に手渡してください。
母親ほど神秘的な存在はないと思う。自らの身体の中に命を宿し、育み、その命を産み出すのだから。妊娠、出産、これほど「神」を感じる時はない。
だからなのか母という言葉は、母なる大地、母なる大河、母なる山々、母なる海…などと呼ばれる。父なるとは言わない。
そこにイメージされている母親像とは、すべてを包み込み、すべてを受け入れ、果てしなく愛してくれる存在というものだ。
確かに母性とは、そのようなものだと思う。しかし理想化され肥大した母親のイメージは、実際の母親にとって大きなプレッシャーになることもある。
私は、結婚したばかりの頃、妻に対して「君は、いつでも我が家の太陽のようであってほしい」と言ったところ「そんなの無理」とあっさりと却下されてしまった。
「えっ! どうして?」と戸惑ったのだが、よく考えてみれば分かることだ。
妻だって落ち込むことや、不機嫌になることもあるだろう。それをいつも明るく、元気で、陽気になどと要求されても困る。それは私の身勝手な押し付けでしかない。むしろ「君は、君のままでいいんだよ」と言えたら良かったのかもしれない。
世間が作り出した母親万能神話は、多くの母親を追い詰めることになる。
あなたは、決して理想の母親になろうとしなくていい。あなたは神話の母親ではなく、現実の母親なのだから。イライラして怒る時もあれば、すべてを投げ捨てたくなることもある。
それが現実の母親なのだ。あなたは、理想の母親にならなくてもいい。あなたは、あなたのままで、すでに、事実、母親なのだから。
我が子が与えられ子育てが始まる。この時期の母親は、実にデリケートな精神状態にある。まるで薄氷の上を歩くようなものだ。いつ育児ノイローゼになってもおかしくない状態でもある。
その原因の一つに、自由の喪失がある。今までは、自由に、自分の好きな時間に、好きなことができた。でも子供が産まれると、そうはいかない。生活のすべてが赤ちゃんを中心に回り始める。赤ちゃんは、容赦しない。配慮も、遠慮もない、泣きたい時に泣くだけだ。
我が家の次男が産まれて産院から帰って来た時、妻がインフルエンザにかかってしまった。高熱で動けなくても、赤ちゃんはおかまいなしにミルクを求めてくる。
疲れ果てて、3分だけ眠らせて!と思っても、容赦なく泣き出す。
疲れて、睡眠不足で、そんな毎日が続くと、自分の尊厳というものが失われていくような、まるで奴隷であるかのような感覚になってしまう。
さらには育児という最も崇高な働きのはずなのに、正当な評価が得られない。仕事をしていない自分が社会から置き去りにされているような感覚もある。さらに、もしここで夫の理解と協力が得られなかったら、もういつノイローゼになっても不思議ではない。
そのような時には、どうしても息抜きが必要となる。自分自身を取り戻せるひと時が欲しい。安心して愚痴れる場、理想の母親として構えなくてもいい、ありのままでいられる場、失敗を分かり合える場、そんな場があったら助かる。
まず、自分の心臓の音を聞いてみよう。次に呼吸の音を聞いてみよう。そして自分は、今何を感じているのか、心の声を聞いてみよう。肯定も、否定もしなくていい、ただ耳を澄ませて聞くだけでいい。
そして、もし声に出せたら、今あなたが一番言いたいことを言ってみよう。誰に? もし、そこに神さまを意識してみたら、それは祈りとなる。母親が神秘的な存在だとしたら、それはあなたが祈るからだ。命の源である神への祈り、それはあなたの心の呼吸になる。ほっとひと息ついてみよう。
1964年東京生まれ。荒れ果てた10代を過ごし、20歳の時にコックの仕事で渡米し、クリスチャンとなる。その後、27歳で東京聖書学院を卒業し牧師となる。40歳の時にハワイにあるホノルル・キリスト教会の牧師となり現在に至る。家族は、愛する妻と4人の子供。趣味は、料理と茶道、サーフィン。
Illustration by Rutsuko
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