Pontaです。前回、前々回の記事に引き続き、ユダヤのお祭りについて紹介していきたいと思います。これまでに「過越しの祭り」と「7週の祭り」をご紹介してきましたが、今回は「仮庵の祭り」について見ていきましょう。
目次
旧約聖書には、ユダヤ人の祭りとして4つの春の祭りと秋の3つの祭りが登場します。そのうち、ユダヤ教の三大祭りとされるのが「過越の祭り」、「7週の祭り」、「仮庵の祭り」で、すでに別の記事でご紹介した「過越の祭り」、「7週の祭り」は春の祭りです。今回ご紹介する「仮庵の祭り」は3つの秋の祭りの最後に行われるものです。この祭りは秋の収穫祭でもあり、ユダヤ人の祭りの中でももっとも喜ばしいものとされています。
ユダヤ暦の年の始まりである第1の月(ニサン)の、14日目に行われる。新年を祝い、イスラエル国家の誕生を記念する祭り。
過越の祭りでは「過越しの食事」を行う。イエスと弟子たちによる「最後の晩餐」は、この過越しの食事であった。
一般的に「過越の祭り」は8日間とされているが、正式には「過越の祭り」は1日で終わり、その翌日からの7日間は「種なしパンの祭り」とされている。
過越の祭りの後に来る最初の安息日の翌日(つまり日曜日)。
初穂の祭りから50日後の日曜日。
ユダヤ暦の7月(ティシュリ)の第1日。安息月。
第7の月(ティシュリ)の10日。
第7の月(ティシュリ)の15日。
「仮庵の祭り」はヘブル語で「ハグ・ハスッコート」といい、略して「スコット」と呼ばれています。この「スコット」は仮庵、つまり仮に建てた家を意味するヘブライ語の「スカー」の複数形です。この祭りの期間には、草木で仮の小屋(テント)––仮庵が建てられます。なぜ、このような仮庵を建て、そして何を祝うのでしょうか。
秋の3つの祭りが行われる第七の月(ティシュリ:「最初」の意味を持つ)はユダヤの新年にあたります。
その第1日目にはラッパが吹き鳴らされる「ラッパの祭り」、そして、10日目はユダヤ人にとって一年のうちで最も厳粛な、悔い改めと神の赦しを求める「贖罪の日」で、この日には断食をします。
その後、15日(14日の日没)から7日間にわたる「仮庵の祭り」が始まります。そして、8日目にもシムハット・トーラー(歓喜祭)と呼ばれる祭りが行われます。
トーラーとは、「律法」と呼ばれている旧約聖書の中の5つの書を指します。シムハット・トーラーはこの「律法を読み終えた感謝と喜び」を表す日です。
「仮庵の祭り」は、今から約3千年前、何百年もの間エジプトの奴隷であったユダヤ人の祖先がエジプトから脱出し、解放された後、約束の地(カナンの地)に辿り着くまでの40年間を、荒野で仮庵を建てて生活したことを覚えるための祭りです。なぜこの祭りの期間に仮庵を建てるのか、その理由がここにあります。荒野は水もパンもないところですが、人々は神から「マナ」というパンを与えられて、生かされました。ですから、「仮庵の祭り」はそのような神の恵みを思い起こす喜びと祝いの祭りと言えるのです。
旧約聖書のレビ記第23章42-43節には次のように書かれています。
あなたがたは七日の間、仮庵に住み、イスラエルで生れた者はみな仮庵に住まなければならない。これはわたしがイスラエルの人々をエジプトの国から導き出したとき、彼らを仮庵に住まわせた事を、あなたがたの代々の子孫に知らせるためである。わたしはあなたがたの神、主である。
主(神)はユダヤ人の祖先(イスラエルの人々)をエジプトから導き出したモーセに、仮庵の祭りについて人々に告げるようにと命じました。旧約聖書のレビ記第23章34節と39節にはそれぞれ、次のようにあります。
イスラエルの人々に言いなさい、『その七月の十五日は仮庵の祭である。七日の間、主の前にそれを守らなければならない』。
あなたがたが、地の産物を集め終ったときは、七月の十五日から七日のあいだ、主の祭を守らなければならない。
レビ記では、仮庵の祭りの7日間(最終日の聖なる集会を含めると8日間)について、以下のように定めています。
現在でもイスラエルでは仮庵の祭り(スコット)が祝われています。初日と最終日は休日で、この祭りの期間に長い休みをとる人も多いようです。この祭りの期間には家の庭先や屋上、カフェやレストランなど、町のあちらこちらにシトロンという柑橘類やルラヴ(なつやめしの若い芽)などの草木を用いた仮庵(テント)が建てられ、中に装飾を施したりして、人々は長い時間をこの中で過ごすのだそうです。
具体的な仮庵の祭りの時期は以下の通りです。
2023年 | 9月30日~10月7日 |
2024年 | 10月16日~10月23日 |
2025年 | 10月6日~10月13日 |
2026年 | 9月25日~10月2日 |
仮庵の祭りは旧約聖書に出てくるユダヤ教の祭りであり、新約聖書ではヨハネによる福音書第7章にのみ仮庵の祭りでのイエスの記述があります。イエスは仮庵の祭りが最も盛大に祝われる終わりの日に人々に向かって大声で言われました。
だれでもかわく者は、わたしのところにきて飲むがよい。わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう(37、38節)。
キリスト教では、イエスを信じる人は永遠の命が与えられると教えています。永遠の命が与えられるのであれば、わたしたちはこの地上において、肉体という“仮庵”の中で、神の恵みによって生かされている、ということになります。また、イエスは神でありながら、人となってこの地上で30数年を過ごされ、天に上げられました。そしていつの日か再びこの地上に来られます。聖書には、そのイエスの再臨後も仮庵の祭りを祝うと書かれています(ゼカリヤ書第14章16節)。
言い換えれば、仮庵の祭りはキリスト教において信じられているイエスの再臨を指し示すものでもあります。ですから、仮庵の祭りはユダヤ教だけではなく、キリスト教でも祝われるべき祭りということになるでしょう。
なお、この記事では詳細には触れませんが、実はイエス・キリストの本当の誕生日は12月25日のクリスマスの時期ではなく、秋の仮庵の祭りの頃であったという説もあるそうです。
仮庵の祭りはユダヤ教徒にとっては神の恵みを覚える時期です。私たちクリスチャンは通常、仮庵の祭を祝うことはしませんが、仮庵の祭が神によって定められた背景を知って覚えることは、いつか再び来られる主を覚え、そして限りある私たちの日々を思い起こすことにつながるかもしれませんね。
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