Taroです。以前、クリスマスの語源やなぜお祝いするのかなどのお話をしました。
今日は、クリスチャンがクリスマスをどのように迎えているのか。教会ではクリスマス時期に何をしているのか。また、日本と海外のクリスマスの違いなどをお話しましょう。
●クリスマスについての記事①は こちら
プロテスタント教会の信徒で新生宣教団の職員。前職から印刷に関わり活版印刷の最後の時代を知る。 趣味は読書(歴史や民俗学関係中心)。明治・江戸の世界が垣間見える寄席好き。カレー愛好者でインド・ネパールから松屋のカレーまでその守備範囲は広い。
近年アドベント・リースやアドベント・カレンダーも目にする機会が多くなりましたね。お菓子でアドベント・カレンダーを楽しめるものも出てきました。ではそもそもアドベントとは何なのでしょう。
クリスマスはイエス・キリストの誕生をお祝いする日。これは12月25日に定められていますが、その備えをする期間をアドベント(待降節)と言います。クリスマスカウントダウンと言った感じでしょうか。また、教会には教会暦というものがあって一年の礼典の目安にしているのですが、それによると教会の一年の始まりは待降節(アドベント)からということになっています。
アドベントとは、ラテン語のAdventus(=アドベントゥス)で「到来」という意味になります。「キリストが来られる」ということを表しています。
アドベントの期間は約4週間。終了はクリスマス・イブ12月24日の日没までです。必ず4回の聖日(日曜日)を経ますので、開始は早い年で11月27日、遅い年で12月3日からとなります。なぜアドベントの終了がクリスマス・イブなのかは後ほどお話しましょう。
アドベント期間の4週間は、文字通りキリストの「降誕」を「待ち望む」期間として過ごします。中世ヨーロッパの教会などでは断食や悔い改めの期間として「清くあること」が強調された時代もあったようですが、現在そのような定めはありません。むしろ「恵み」が近づいてくることを「喜びながら待ち望む」というのが本当ではないかと思います。
教会では4本のろうそくを飾り、アドベント第一聖日に1本、第二聖日に2本と週毎に点火をふやして、その日が近づくことを目で見て実感していきます。アドベント・カレンダーは主に子どもさんのいるご家庭でよく使われると思いますが、目で見てその日の到来をワクワクしながら待つのは楽しいですよね。
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いよいよアドベント期間が満ちて、クリスマス・イブの日を迎えます。それではアドベントの終了が12月24日の日没までというのはどういうことなのでしょう。
クリスマス・イブとは、英語でChristmas-Eve。Eveは夕方の意味。つまり「クリスマスの夜」ということになります。それなら25日の夜のことだと思いますよね。
イブが、夜を表すのに間違いはないのですが、クリスマス・イブはなぜ12月24日晩になっているのでしょうか。それは、一日の数え方に理由があります。
私たちは一日を深夜の0時からカウントしますが、実は、聖書的な一日は日没からカウントされています。教会暦も日没から一日を数えるため、クリスマスの当日というのは、24日の日没からとなるのです。つまりクリスマス・イブは「前夜」ではなくクリスマスに「入った夜」ということになるのですね。そして、24日の日没とともにアドベントが終了となり、クリスマスの日に入るということなのです。
クリスマス・イブの教会行事にはどんなものがあり、クリスチャンはクリスマス・イブをどう過ごしているのでしょう。これは教会により、人により様々だと思いますが、代表的な例をあげてみましょう。
クリスマス・イブに信者たちが集まって街頭や駅前で、あるいは家々を回ってクリスマス・キャロル(クリスマスの賛美歌)を歌うことをキャロリングと言います。『クリスマス・キャロル』というイギリスのディケンズの有名な小説がありますが、これはクリスマス・イブに主人公のスクルージがクリスマス・キャロルを歌いにきた少年たちの寄付を渋るところから始まる物語でしたね。
自分が体験したキャロリングは、教会から出発して1~2km範囲の信徒のお宅を巡って、門の外でロウソクを手にしてクリスマス・キャロルを歌い、歌い終わったら「メリー・クリスマス!」とクリスマスの到来を宣言するもの。待ち受ける教会員のお宅では電気を消して静かに賛美を聴き、「メリー・クリスマス!」の言葉とともに点灯して外に出てくるというものでした。家々でお菓子などを持たせてくれるので教会に戻ってから、皆で暖をとりつつ、いただいたお菓子を食べるのもキャロリングの楽しみの一つでした。
教会によっては、クリスマス・イブにクリスマス礼拝をおこなっているところもあります。
これはもちろん信者のためでもあり、また教会に来られたことのない方々のためでもあり、全ての人に開放されています。教会では一人でも多くの人に、イエス・キリストの福音(良い知らせ)を知ってほしいので、「自分は部外者だから」などと思わずに安心して覗いてみてください。きっと思い出に残るクリスマスの経験となることでしょう。
ロウソクに点灯して礼拝をおこなうことから、キャンドル・サービス、燭火礼拝(しょっかれいはい)とも言われています。サービス(Service)とは英語で礼拝の意味ですね。ちなみに結婚式の披露宴でおこなわれている『キャンドル・サービス』はクリスマスのそれとは違う和製英語と言えるかもしれません。
教会によっては、クリスチャン・アーティストを招いてクリスマス・コンサートなどを行い、信者、初心者に関係なくキリストの降誕を喜びつつ楽しいひとときを持つところもあるようです。これはクリスマス・イブに限らず、そのシーズンの土日などに持たれることもあるようです。
日本では12月25日が祝日ではないため、ほとんどの信者がその一日を特別な日として過ごすことは出来ませんが、それぞれが、クリスマスであることを意識して過ごしているのではないでしょうか。夜の時間は出来る限り早めに帰宅して家族で過ごすことが多いのではないかと思います。
12月24日や25日が必ずしも日曜にあたるとは限らないので25日の直前の日曜日が、教会としてのクリスマス礼拝に位置づけられています。この礼拝は通常の礼拝時間(日曜の午前10時頃が多い)に行われます。
クリスマス・イブの礼拝と同様、クリスチャンではない人にも開かれていますので、気軽にお出かけください(もちろん教会は1年中Welcomeです!)。
礼拝が初めてで不安だという方には、別な記事で礼拝出席について解説されていますのでご参照ください。
●礼拝ついての記事①はこちら
教会によりますが、クリスマス聖日礼拝の午後に、愛餐会(食事会)をもって、楽しい時間を過ごすところが多いのではないかと思います。特別に「クリスマスターキー(七面鳥)」がふるまわれる教会もあるようです。
12月25日の晩までがクリスマス(キリストの降誕を祝う記念日)ですが、クリスマスのシーズンはいつまでなのでしょう。日本の街々ではハロウィーンが静かになる11月頃から徐々にクリスマスムードに切り替わって、12月25日の晩を境にあたふたとお正月の準備に入るイメージですが、教会は、信者はどうしているのでしょうか。また、キリスト教の背景をもつ海外の国々ではクリスマスはどのように過ごしているのでしょうか。
前述の通りクリスマスは、年末の忙しい時期であり、25日が祝日でもないため信者も日常生活を送っています。教会では4週間前のアドベントからクリスマスムードが高まっていきますが、25日直前の日曜日やクリスマス・イブなどがクリスマスのメインの集まりとなり、それ以後は新年に向けて飾りなども外している場合が多いのではないかと思います。
実際には降誕節というのは12月25日から年明けの1月6日の公現日(東方の三博士がイエスを礼拝したとする記念日、ところにより顕現日とも呼ぶ)までというのが、カトリックやプロテスタントの多くの教派の教会暦で定められているところでして、お正月を過ぎてもクリスマスは続いているのですが、そこは信者といえども日本的な文化の影響は中々消えないですよね。新年礼拝をクリスマスの飾りの中でおこなうことに違和感を覚える教会は現在でも多いようですし、教会暦をそれほど強く意識しない教会もあります。
歴史的にキリスト教の背景を持つ西欧諸国などは、クリスマスシーズンの考え方やクリスマスの過ごし方は日本とは違うようです。アドベントの頃からクリスマスムードが高まるのは日本と変わりがないようですが、クリスマス当日は、そして25日を過ぎてからはどのように過ごすのでしょうか。
日本ではクリスマスは年末の五十日(ごとうび)にあたり、一年で最も忙しい時期。日本はキリスト教国でもないために祝日指定はされておりませんが、西欧諸国はというと、ほとんどの国は12月25日が祝日になっています。ロシアはロシア正教がグレゴリウス暦ではなくユリウス暦を使用している関係で1月7日をクリスマスとしていてその日が祝日になります。
国によってクリスマス休暇のとり方もそれぞれのようですが、24日から5日間ほどまとめて休みをとるか、1月1日まで続けて休むなどして、まとまった休みを帰省するなどに当てて家族でゆっくり過ごすことが多いようですね。
海外の相手とビジネスをされている方は、その時期になると仕事が動かなくなることを肌で感じておられることでしょう。
私の職場には海外からのスタッフや宣教師が何人かいて、入社した頃は今よりその割合も多かったので、いきなり様々な文化の違いを感じさせられました。
クリスマスについて言えば、12月25日は職場が定める休日となっていたこと。仕事納めの日は29日頃で、「納会」では家族も招いてターキー(七面鳥)をメインにした西欧風のお食事会をおこなっていたのですが、その「納会」を普通に「クリスマス祝会」と呼んでいたこと。新年になっても職場のチャペルにクリスマスの飾りが出たままになっていたことなどです。自分の中では「のんびりしているなあ」「係の人が明確になっていないから?」(笑)などと感じていたものでした。暦の上では年が明けてもクリスマスは続いていると知ったのは後のことでした。
ノルウェーの知人の話では、その人の住む地域では24日の晩にはほとんどの人(普段礼拝に来ない人も)が教会の礼拝に行き、25日は家で家族と過ごすのが定番で、26日も祝日だそうです。お店なども24日の午後から26日まで閉めるところがほとんどで、クリスマスの飾りをしまうのは1月中旬とのことでした。
街は、日本では25日は一番にぎやかな日と言えますが、ヨーロッパではノルウェーに限らず25日にはお店も休むところが多いのだそうで、日本のお正月をイメージすると近いかもしれません。
フィリピン人の同僚によると、カトリック信者の多いフィリピンのクリスマスの過ごし方は驚きで、なんとクリスマスは9月から飾り付けが始まるのだそうです。また、12月16日から24日までの9日間は、毎朝4時から教会でミサが行われ、「全て参加すると願い事が叶う」と言われていて、そのためにミサ出席を励む人が多いとか。
クリスマス・キャロル(キャロリング)もその期間のどこかで行われ、子どもたちは回った家々でお小遣い(お金)をいただくのだそうです。そして、なんと、なんと、12月16日から1月初めまで職場や学校などお休みになるのだそうです。随分長いですね。
また、クリスマスは子どもたちにとっては、実の親からはもちろん、ゴッドペアレンツ(後見親=実親の親友などがつとめる)からもクリスマスプレゼントがもらえるので益々嬉しい時になっているようです。
アメリカも広いので一様ではないと思いますが、アメリカ人の同僚からもクリスマスの過ごし方を聞きました。25日はやはり祝日で24日の午後から休みをとるようです。彼は24日には祖父母のところで楽しいひとときを過ごし、25日には両親と兄弟が集まりクリスマスを過ごすのが恒例だそうです。ノルウェー同様、24日の晩か25日の礼拝に行く人たちも多く、クリスマスとイースター(復活祭)だけは教会に行くという人たちもいるようです。
ヨーロッパとは違い、日本同様25日を境に飾り付けなども外し始め、クリスマスムードも切り替わっていくようだと言っていました。
クリスマスの当日は、日本では恋人と過ごしたり、友達とパーティーなどしたりして過ごすイメージが強いのですが、アメリカに限らず、海外では家族と過ごすことが多いようですね。
最後に、クリスマスシーズンにお勧めのクラシック音楽をご紹介しましょう。年末になりますと、ベートーヴェン第九交響曲(合唱付)の演奏会が恒例行事になっていますが、それ以外にも12月によく演奏されるクラシック音楽はあります。そのいくつかをご紹介します。興味のある方はお気に入りのCDや配信などを探してみたり、またどこかで演奏会もあると思いますのでチェックして出かけてみてはいかがでしょうか。
7歳のマリーという少女がクリスマスプレゼントに「くるみ割り人形」をもらったところから展開していく物語。チャイコフスキーのバレエ音楽では最後の作品で、ドイツのE.T.A.ホフマンによる『くるみ割り人形とねずみの王様』(独: Nußknacker und Mausekönig、1816年)という童話を、フランスの作家アレクサンドル・デュマがフランス語に翻案したものが原案だそうです。今でも、特にロシアではクリスマスに演奏されることが多いようです。
ドイツ人の作曲家ヘンデルが、イギリスにて英語の原案(作家チャールズ・ジェネンズが聖書の言葉を抜粋編集したもの)に曲をつけた3部構成で2時間半の大作です。
「メサイア」は「油注がれた者」という意味のヘブル語「メシア」の英語読みで、ギリシャ語では「クリストス」となります(「キリスト」はその日本語的表記です)。文字通りイエス・キリストの生涯を語り、救い主を世に送った神の愛に心を向けることができる内容です。特に第1部はキリスト誕生の預言から、誕生にまつわる多くの聖書の言葉が綴られて、この時期にピッタリな音楽といえるでしょう。
それぞれの歌詞(聖書箇所)を読みながら聴くと恵みが倍増します! 第2部終曲の「ハレルヤ・コーラス」は誰もが知る名曲ですよね。ヘンデルはなんとこの大曲の楽譜をわずか24日間で書き上げたのだそうです。初演の1742年当時のイギリスはジョン・ウェスレーらによる信仰復興運動(リバイバル)の頃で、時代の空気も感じさせてくれますね。
J.S.バッハは、ドイツ・ライプツィヒの聖トーマス教会のカントル(音楽監督)を1723年より27年間も勤め、この曲は1734年にクリスマスの礼拝のために作りました。
6部構成で2時間半にも及ぶ大曲ですが、現代のように劇場のコンサート形式で一度に演奏されたものではなく、先にお話した降誕節(12月25日~1月6日)の6回の礼拝でそれぞれ演奏された独立した曲でした。その日の朗読聖書箇所や説教にリンクさせて会衆が神様をよりよく知るために苦心して書き上げたものだったようです。
なんだか当時の信徒は羨ましいですね。主の降誕を喜ぶ華やかな旋律を基調としながらも、受難曲で用いられる旋律が第1部の最初のコラール(会衆賛美)と第6部の最後のコラールで使われ、キリストの降誕が、「贖罪(しょくざい)のいけにえ」として十字架に架かるためであることを暗示しています。
いかがでしたか。クリスマスシーズンの教会や、信者の過ごし方について色々とご紹介しました。
最近は日本にも大分海外のクリスマスの風習などが紹介され、その過ごし方も徐々に生活の中に取り入れられてきているような気がします。
どんなスタイルであれ、背景にはイエス・キリストの降誕を喜ぶ精神があってのこと。その秘訣を知るためにも教会のクリスマスを体験されてみてはいかがでしょうか。きっと今までにない新しい発見があることでしょう。
今年のクリスマスが恵み豊かなものになりますように。
では。
●クリスマスってそもそも何?なんでお祝いするの?という方はこちらの記事もお読みください。
●イースターについてのこちらの記事もお読みください。
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